高齢者負担

多くの高齢者にとって老後の一番の心配は、寝たきりになったとき誰が介護してくれるかである。
 子どもも親元を離れ、独立した世帯を持っていると、そう容易には面倒を見てくれない。

 子どもが面倒を見てくれたにしても、認知症などで手を焼かせたくないと考える親も多いことだろう。

 そこで必要になるのは、家族の手を煩わせずに公的機関による「医療」「介護」「福祉」の恩恵を等しく受けられる社会の構築である。

 昨年四月、国民健康保険料や介護保険料などが改定されたのは、そんな社会を目指しての医療制度改革だった。

 だが、スタート時の理念だった「介護の社会化」とは程遠い現実が浮かび上がっている。

 県民主医療機関連合会の調査によると、制度改革以降、県内の六十五歳以上の約六割が「生活にゆとりがなくなった」と感じていることが分かった。

 老人医療の有料化が増え、デイサービスなどの一日当たりの単価も上がった。自己負担金が次々拡大され、高齢者の肩に重くのしかかってきたのだ。

 「デイサービスやデイケアの中止、回数減」を余儀なくされ、「電動ベッドの利用中止」「訪問介護の回数や時間減」に追い込まれ、「介護施設から退所」した人もいるという。

 医療現場では、検査や入院ができない老人も増えており、さらなる福祉サービスの低下も懸念されている。

 より質の高いサービスを目指すはずの制度改革が、経済的、肉体的、精神的に本人や家族を追い詰めている現状が浮き彫りになった。

 高齢者の毎月の収入は「ゼロ」が12%、「五万円未満」が20%、「五万?十万円」が25%で、「十万円以下」が約60%を占めている。

 支出額については「とても負担」が24%、「やや負担」が21%で半数近くが負担を感じている。

 ここ四、五年の暮らしの変化については、「やや苦しくなった」「大変苦しくなった」が合わせて四割以上を占めている。じわじわと高齢者にしわ寄せが来ていることを示しているといえよう。

 高齢社会が高負担社会となっては、制度改革の理念にもとる。このままでは、高齢者が健康な生活を送ることは難しく、特に一人暮らしや「老老世帯」を取り巻く環境はさらに厳しくなるに違いない。

 高齢者が置かれた実態を詳細に把握し、今後、加速する少子高齢化時代にどんな制度が有効か再検討する必要がある。

沖縄タイムス - 2007/1/24