福大が美肌化粧品 薬学部のグループ 開発、商品化

「大学でお肌を美しく」?。福岡大薬学部の高田二郎助教授(薬物送達学)らの研究グループが、肌の染みの元になる色素生成を抑える効果の高い化粧品材料を開発した。ビタミンEの一種を応用したもので、この材料を配合した美容液を福岡大病院(福岡市城南区)が染み治療用として取り扱っている。福大によると、大学による化粧品開発や大学の薬学部、医学部が連携して美容医療に取り組む事例は全国でも珍しいという。

 高田助教授によると、ビタミンEは一般的に老化防止に効果があるとされ、8種類ある。このうち「γ(ガンマ)トコフェロール(γ‐Toc)」について、「ヒトの皮膚に含まれるビタミンEの大半を占める」「傷みや炎症を起こす酵素の働きを防ぐ」などの研究成果が、2000年ごろ相次いで明らかになった。

 高田助教授はγ‐Tocを皮膚の健康維持などに生かす創薬研究を開始。水に溶けにくいγ‐Tocにアミノ酸の一種を組み合わせることで水溶性に改良するなど、皮膚に効率よく取り込むことができる物質「γ‐TDMG」を開発した。

 ヒトの細胞を使った実験で、γ‐TDMGは他のビタミンEを改良した物質には見られない抗炎症効果があることを実証。同大出身の薬剤師らとベンチャー企業を北九州市に設立した上で、06年に化粧品材料として特許を取得。同年8月、γ‐TDMG配合の化粧品を開発した。

 一方、福岡大病院は形成外科と皮膚科で03年に「美容外来」を設置し、染みの治療などを実施。09年完成予定の新病棟には九州の大学病院で初となる「美容医療センター」(仮称)を設置するなど、美容医療を強化する方針だ。その一環として、同企業が福大開発の化粧品を昨年11月から販売。「医薬連携」の取り組みを通じて、美肌に関心の高い中高年女性など来院者数の増加にもつなげたい考えだ。

 高田助教授は「大学の専門知識を生かした化粧品も活用しながら、医療の信頼性をアピールできれば」と話している。

西日本新聞 - 2007/1/6