健康保険で払いすぎ医療費通知、20年間怠る

自営業者や無職の人などが加入する国民健康保険で、福岡市が、患者の医療費の払い過ぎを知らせる通知を過去20年間、怠っていたことが16日、分かった。これによって患者は、払い戻されるはずの金を受け取り損ねていたことになる。

 国保では、国民健康保険団体連合会(国保連)が医療機関から届く診療報酬明細書(レセプト)を審査し、検査や投薬が規定より多いなど過大請求がないかチェックしている。患者も窓口で自己負担分を支払っており、払いすぎている可能性がある。このため、厚生労働省は通達で、過大請求部分の自己負担が高額の場合、各運営団体が患者側に通知するよう求め、福岡県は1万円以上だと通知すると決めている。通知を受けた患者は医療機関に返還を求めることができる。

 市は11月、社会保険庁が運営する政府管掌健康保険での通知漏れ発覚を受けて調査を実施。通達が出た85年以降、通知を出した形跡がなかった。書類が残る01?05年度の5年間で通知を怠っていたのは1181件。このうち05年度分では、過大請求部分の自己負担の合計は、単純計算では約950万円分になる。

 ただ、高額医療の場合は自己負担額の上限が収入別に決められているため、実際に患者が払いすぎていた額は、これより少額になる。市保険年金課によると、単純計算で自己負担が1万円以上になるのは、この高額医療にあたるケースが多いという。

 同課は「過大請求を通知しても患者が金を受け取れる例は少ないため、通知していなかった面がある。加えて、過大請求を知らせれば、患者と医療機関の信頼関係に影響すると配慮していた」と話している。今後は通知を徹底する方針。

 06年3月末現在、同市では約25万6000世帯が国保に加入している。

朝日新聞 - 2006/12/16